yumipon0524’s diary

草彅剛さんが大好きです。剛くんメインのひとり言日記です。

ミッドナイトスワンを観て

f:id:yumipon0524:20200827065932j:plainミッドナイトスワン
オンライン試写会に参加でき一足先に観ることができました。
あの日から数日経ってるのに
ブログがなかなか書けない。
書こうとしても言葉につまる。
文字に出来ないのです。
草彅さんが
「映画が終わっても席を立てなかった」
と言われてましたが、その意味を、受けた衝撃の強さを今私も共有してるのかもしれない。



予告編は何度も見ました。

https://youtu.be/zBzdu0EURH4


その予告のあのシーン、このシーンが
ここでこう繋がるのか、
そんなことをも思いながらの、オンラインだから
パソコンでの視聴です。


きらびやかな、夜のショーパブの世界から映画は始まります。
唇に紅をひき、念入りにお化粧をし、仕事のためにお酒を飲み、ステージに立ち、生きてくために話を合わせ、笑顔を作り、相手を持ち上げ、そのためには自分を落とすことも厭わない。
それでも彼女たちなりに逞しく生きています。


冒頭からトランスジェンダーと言われる人たちの世界に引きずりこまれ、そこから繰り広げられる人間模様があまりにも切なくて痛々しくて辛くなった。
目を背けたくなるような衝撃的なシーンもあって、涙が止まらない。
全編通して流れてくるあまりの絶望感に胸がひきちぎられそうだ。
水川あさみさん演じる早織が言い放った一言は、私の心臓をぐさぐさと突き刺す。
残酷なその言葉に、
「ほんとは、あなたも心の底ではそう思ってるでしょ」
そんな意地悪な声がどこからか聞こえてきて
自分の中にある醜さにゾッとした。
一果の友達のりんも孤独のなかで生きてた。
ほんとの愛情が欲しかったんだよね。
だから、空高く羽ばたいたんだよね。
そんなりんのご両親は、我が子りんをしっかりと見てないし、見ようともしてない。自分のことばかり。贅沢な暮らしを与えることが親の愛だと思ってたとしたらそれは哀れだよ。
凪沙の唯一の友達瑞希だって悲しすぎる。

そんな中でみんな必死に生きてます。
なかば、なげやりになりつつも、
這いつくばって、もがいて、苦しんで、その姿があまりに必死すぎて見てて辛いんだけど、生き方に正解も不正解もないから人間なんだよね。


それにしても、
草彅剛が凪沙なのか、凪沙が草彅剛なのか、
そんなこと、もうどうでもいいくらい、凪沙だった。
体のちょっとした動き。仕草。
女性ならではの、柔らかさと優雅さ、可愛らしさ、そして艶があった。
確かに、女としてそこにいるのです。
男としてこの世に生を受けながらも、心は女、
女として生きたい。と願う、
トランスジェンダーとしての苦悩が赤裸々すぎて
「なんで私だけ」の凪沙の嗚咽が耳にやきついて離れない。


私は女です。
なんの疑問も不満もなく当たり前のように女として生きてます。
時々、男に生まれたかった、と、思うときもあるけど、それは単純な理由からで、本気でそんなこと考えたことはない。
だから、私なんかに、心の性と身体の性の不一致がどういうものなのか、正直わかるはずがない。
なぜ、そんな生き難いいばらのみちをあえて歩んでるのだろうか。とさえ思ってしまう。

テレビでよく見るいわゆるオネエ系のタレントさんたちは、いつも明るく笑ってる。自分の性をネタにしてることもある。
世間の目なんてくそくらえ、ありのままの自分をさらけだして生きてて幸せなんだろうな、ずっと思ってきた。
だけど、それは、身を切るような、精神的肉体的苦痛、経済的苦痛に絶え乗り越えての姿なんですね。
たくさん泣いて今の輝きがあるんですね。


凪沙だって、そんな人生を思い描いてたはず。
そんな凪沙の人生を変えたのが
実の親から育児放棄された一果でした。
この少女を新人の服部樹咲が演じてるんだけど
この新人女優がまた凄かった。
目に底知れぬ強さと哀しみ、虚しさが宿ってるの。

草彅剛の目と服部樹咲の目。
この目が、魂がぶつかりあって、予測できない見事な化学反応をおこして
凪沙と一果が誕生したのか。



草彅剛さんが
役作りはなにもしてない。監督と樹咲ちゃんの間にいたら自然と凪沙になれた
と話してたけど
まさにそうなんだと思う。


一緒に暮らしているうちに凪沙のなかに
次第に芽生えてくる母性愛。

暴れ狂う一果をあるときは
自分をも戒めるように強く抱きしめ

あるときは
よしよし、と、まさに、聖母マリア様のよう表情で、優しく優しく包み込むように抱き締める。



だけど、思い知らされるの、
どんなに頑張っても
どんなに、一果を大切に思っても
血の繋がりには叶わない。と。

一果の母親になりたい。

その一心で凪沙は完全に女になった。

これで幸せになれるはずだったのに、神様も残酷。
凪沙にこれでもか、と試練をお与えになる。

うまくいかない人生だけど

でも、凪沙の最期は
幸せだったんでしょ。
きっとそうだよね。

ラストシーンでの一果の凛とした美しさのなかに温もりがあるオデット。
母と娘
二羽の白鳥が
寄り添いあって魅せた 愛の証。
生きる力が滲み出す。
希望の光がみえてくる
心に火が灯ります。
柔らかな光が射し込んできます。


主演の草彅剛さんが
これは今やるべき作品だ。
間違いなく自分の代表作になる。たくさんの方に観てもらいたい、と言った。

確かに、今の草彅剛でないとこの凪沙はうまれなかった。
そう言いきれるほど
最後の最期まで凪沙として生きてた。


内田監督の


「草彅さんにさらに別の次元に行って欲しい」

この言葉に体が震えた。


そうよ、
あの世界観はこんなちっぽけな日本に押し込めておいちゃダメよ。
心からそう思います。



とにかく、草彅剛の存在感が圧巻すぎた。
新人の服部樹咲がこの作品が女優としてのデビューだとは全く思えないほどの堂々とした演技で私を魅了する。
この二人を取り巻くキャストたちも一人一人がその役として生きててほんとに素晴らしい。

内田監督の光と影の演出もお見事だし、
張り巡らされた伏線の回収があまりに美しく自然で意味を含んでて感動する。

そこに、渋谷慶一郎の作り出すピアノの旋律が心に染み入り深い余韻を残してくれる。


これは、絶対にスクリーンで観るべき映画です。
あの空間にあの音響、あの独特の雰囲気の中で
作品の世界観にどっぷりと浸りながら
本物の母になった凪沙の生きざまを見届けて欲しい。
一果の、凪沙と共に歩む未来を感じて欲しい。

気品と威厳と、その根底にある大きな大きな愛溢れる
バレエを堪能して欲しい。

ひとりでも多くの方に観てもらいたい。
劇場に足を運んで欲しい。
役者陣のほとばしるパッションを浴びて欲しい。
間違いなく傑作です。