yumipon0524’s diary

草彅剛さんが大好きです。剛くんメインのひとり言日記です。

12月3日のウイ劇場

何度観てもそのたびにとんでもなく感情が揺り動かされる。

体は自然にリズムをとるし、真っ赤な衣装に身を包んだ女性ダンサーの妖艶さに息を飲むし、しなやかで切れもあり、むせぶほどの色香を放つウイのダンスに酔いしれて、ウイを欲して、 心の中で何度も何度も叫ぶ。ウイウイウイと。

『アルトゥロ・ウイの興隆』

 

12月3日、神奈川公演千秋楽。

 

 

定刻通りに幕が上がる。

客電が消える。

登場人物たちが次々にスタンバイする。

真っ赤なスーツのオーサカ=モノレールのメンバーがステージに立つ。

彼らの奏でるJBの音楽がズシンと体に響く。

軽快なトークが続いて、いよいよ、我らのアルトゥロ・ウイの登場だ!

ウイのショーの始まりだ。

 

マントをひらつかせ、スポットライトを浴びながら華々しく姿を見せ、

同じくまっ赤な衣装で、Sex Machine を歌い躍る。

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劇場内のボルテージが、一気に最高潮に達したところで、

お芝居が始まっていく。

 

シカゴギャング団のボス、アルトゥロ・ウイは、政治家ドッグズバローと野菜トラストとの不正取引に関する情報をつかんだ。それにつけこみ強請るウイ。それをきっかけに勢力を拡大し、次第に人々が恐れる存在へとのし上がります。見る見るうちに勢いを増していくウイを、はたして抑えることができるのだろうか・・・?

 

 

https://youtu.be/NQMV4chXALU

 

「こんなやつがかつてほとんど世界を支配しそうになったのです!/諸国民がやつを屈服させ、やつの主となりました。それでも/ここで勝利を喜ぶのはまだ早すぎます。/やつが這い出てきた母胎は、まだ生む力を失っていないのですから」 ~エピローグより~

1933年ブレヒトナチスに追われ、15年に及ぶ亡命の旅に出ます。アメリカへ渡ったブレヒトは英雄として神格化されるギャングたちの映画に興味を持ち、ギャング団の資料を集めたと言われています。その中で、禁酒法時代にシカゴの高級ホテルを住まいとし、密造酒製造販売、売春業、賭博業を組織化し、勢力を拡大していったアル・カポネヒトラーとの共通点を見つけ、41年に戯曲の執筆に着手します。衝撃をあたえた本作の初演は1958年にドイツ・ヴュルテンブルグ州立劇場にて上演。1956年にブレヒトがこの世を去った後でした。

日本では、1969年に田中邦衛主演、劇団俳優座による『ギャング・アルトゥロ・ウイ~おさえればとまるアルトゥロ・ウイの栄達』のほか、2005年に新国立劇場が招聘したマルティン・ヴトケ主演、ベルリナー・アンサンブルによる公演があり、大きな話題を呼びました。

この作品は、ヒトラー率いるナチスがあらゆる手段を使い独裁者として上り詰めていく過程を、シカゴのギャングの世界に置き換えて描いたという大胆な作品。作品の中にはヒトラー「興隆」の過程が劇中にちりばめられていて、彼の君臨を許した当時の社会環境が冷ややかな姿勢で描かれています。第一次世界大戦後、敗戦国となり莫大な賠償金を課され、未曾有のインフレに苦しめられたドイツ。そんな荒廃した生活の中で、ヒトラーナチスは民衆の不満に応え、民衆からの絶大な支持を勝ち取ることによって権力を握っていきました。

ナチス支配の終焉からおよそ70年経った現代、日本のみならず世界中で露になっている格差の問題は、まだ終息をみないコロナ禍においてますます拡大し、社会には不安が蔓延しています。この世の中の不満を救い取り、新たな独裁者が現れたとしたら・・・。今も昔も、独裁者を誕生させるのはそのような「空気」を生み出す民衆の心なのではないかというブレヒトの警鐘が現代にも響いてくるようです

 

 

ウイ、

圧倒的存在感に畏怖感。

彼に煽られ、彼に洗脳され、どんどん我を見失っていく大衆と化した観客。

 

そのウイが

 

「今俺に必要なものはなんだ。

You are POWER

お前のパワーだ

魂のパワー

みんなの力を俺に与えてくれ」

 

情熱的に、私達にむかって、叫ぶ。

 異様な興奮に

体の芯がかーと熱くなる。

煽られてるのはわかってるのに、喜んで魂を捧げた。

私は彼に屈服した。

 

裁判のシーン、恐怖ですくんだ。そして心も凍りついていく。

どうみても理不尽極まりない。

力なき罪なき庶民が

暴力と権力によって真実がねじ曲げられて

無理やり犯人に仕立てあげられていく。

 

ウイは表舞台には出てこない。

後方で

我知らずをきめこんで

髪をなでつけたり、真っ赤なペットボトルを口にしたり、体をゆらゆら動かしたりと、まるで他人事。

隣に座ってる片腕のローマは身動きひとつしない。こちらも無関心。のように見える。

この悪徳裁判を牛耳ってる張本人は、明らかにこのふたり。

だが、流れが悪くなったとき、ウイは額に指を当て俯いた。

さすがのウイもうろたえてる。

このシーン、ふたりに照明は当たってない。

あくまでも主役は、舞台中央の役者陣。

暗がりのなか、ウイとして、ローマとして、そこにいる。

 全然手を抜いてない。

まさに、プロの姿。

 

クライマックスは、

ウイ渾身の最後の演説。

 

客席に表れたウイが、キラキラのマントをひらつかせながら、私のすぐ隣を通り抜けてく。

ウイを下から見上げた。

顎から口もと、鼻にかけて、彫りの深さで陰影ができ、それはそれは美しい。

華々しい登場と圧倒的存在感のウイが声高々に

「諸君に問いたい。

私に賛成なのは誰かな。

私に賛成しないものは私に敵対と見なしどういう憂き目にあうのか覚悟のうえでしょう。

では、選んでください」

と。

 

JBの音楽が高揚感をさらに高める。

 

「アルトゥロ・ウイに賛成の方は手を挙げてください」

熱に浮かされたように、ひとり、またひとり、彼に心酔した者の手が上がっていく。

だが、まだまだ少数。

 

「帰ってもいいかな。」ヤジが飛ぶ。

 

ダダダダダーーーいきなりものすごい銃声が鳴り響く。

 

シーン。場内一斉に凍りつく。

恐ろしいほど不気味な静寂。

 

大衆である観客をウイは乾いた目で見渡す。

恐怖に怯える様を楽しんでるようには見えない。

無機質な目だ。

冷たい光を放ちながらもその奥にあるものは

絶対的孤独。

 

 

静寂を破り、嘲笑うかのように更なる挙手を求める声が鈍く響き渡る

 

その場を支配する空気が息苦しい。

あまりの恐怖に震えながら、手が恐る恐る上がる。

 

死にたくない。命が欲しい。

ならば、

言いなりになるしか生き残る道はないじゃないの。

絶望と諦め....からの服従

 

 

 

 

ウイはアメリカ国内の地方の名前を叫び始める。

デトロイトセントルイス、コロンビア....ニューヨーク!!

声を振り絞って勝利の雄叫びをあげる。

オーサカ=モノレールの爆音がぴたりと止む。

 

スクリーンにはハーケンクロイツが浮き上がり、それが飲み込まれて日の丸に変わる。

 

これは..

はるか昔の異国の地での出来事。では済まされない、現実味を帯びた恐怖で、心臓が凍りつく

そして、またおとずれる静寂。

 

 

そこに、MCの諭すような声が同化した大衆の心を突き刺す

「みなさん、

行動すべきこと学びましたか?

ぼんやりしないでしっかり見極めましょう

あれから世界はかわった。あの男はいなくなった。もう大丈夫とたかをくくらないこと。

かつてこういうやからが世界を征服しかけたのですから。

諸国民がこの人物を屈服させました。

勝どきをあげるのは早すぎます。

こいつを産み落とした母なる胎内は

今なお繁殖力旺盛なのですから」

 

そして、みんな踊る、おもいおもいに叫び踊る。

でもウイは一点を見つめたまま微動だにしない。

なにを見、何を思うのか。

 

そして、狂ったように踊り出す。

 

テンションは最高潮。

異常に高まる興奮。

割れんばかりの拍手拍手

 

それが次第に手拍子に変わっていく。

そのタイミングが実に見事。

カーテンコールを求める観客の声

あれだけの人数のきもちがひとつに纏まっていく、それもごく自然になんの違和感もなく。

 

 

観客と演者のこれほどの一体感を感じたことが今までにあったか?

否、ない。

あの感覚は私もはじめての経験。

 

規制退場のアナウンスが流れはじめても手拍子は鳴りやまず、さらに大きくなっいく。

ウイ、ウイ、ウイ、観客の思いが一つになって、

声なき声でアルトゥロを求めていく。

鳥肌がたった。あまりの感動で泣きたくなった。

初演の千秋楽で

みんなでWE RISE を歌い踊い、

場内、割れんばかりの歓声に、まさに、ライブ会場と化したときもそれはそれは興奮したもんだけど。

その時とはまた違う感動。

声なんか出せなくても拍手で気持ちは一つになれるんだよ。

て、、こと、今日ほど感じたことはない。

 

観客の求めに応じて、剛くんが、ステージに戻ってきてくれた。

そして、演者のみなさんを呼び集める。

みなさんもね、こんな経験はそうそうないんじゃないかな。照れくさそうに笑いながらも、その顔はほんとにうれしそうだった。

見渡せば満員の観客が総立ちで熱い拍手で自分達を迎えてくれてる。

ステージから見るその光景

板に立つものだけに許された最高の景色。

最高の贅沢。

 

 

座長の剛くんからの挨拶は一言もなかったけれど

 

全方向にむかって深々と頭を下げては見渡してるその顔は晴れやかで清々しくて、やりきった満足感と、

ありがとうありがとうありがとう。感謝の思いが溢れてた。

 

そんな彼に万感の思いをこめて、拍手を送る。


剛くんはお手降りしながらステージを後にした。


ウイはもういない。

人懐っこい笑顔の、私の知ってる草彅剛さん。


ほんとにいい千秋楽だった。

 

だけどね、その間、ずっと、

字幕には

 

 

熱狂する大衆のみが操縦可能である。

政策実現の道具とするため、私は大衆を熱狂させるのだ。

      アドルフヒトラー

 

とあるの。

 

これを目にしながらも、

大きな拍手で

出演者を称え労い、楽しんでるんだよ、私達。

 

 

 

ゾッとするでしょ・・・・・


一番怖いのは...熱狂する大衆。つまりは、自分