書かずにはいられない、 青天を衝けでの草彅慶喜公の微笑。
毎週日曜の夜8時から放送中の大河ドラマ『青天を衝け』
徳川慶喜を演じる草彅剛さんが見せる表情が
毎回毎回神懸ってて、
心の琴線震えっぱなしなんです。
表情だけで
心のうちを表現する。
それをいとも簡単にやってくれるの、草彅剛という役者は。
渋沢篤太夫と徳川慶喜、主従の別れが、すなわち
近代日本の父渋沢栄一の誕生の瞬間になるという素晴らしい回でした。
篤太夫は、新政府から大蔵省への出仕を求められます。だが、篤太夫は、慶喜に
「自分は上様の元で力をたくわえ、
新政府が倒れたあとは、我らで新しい日本を守る。」
と、力説するんです。
「行きたいとおもっておるのであろう。ならば私のことは忘れよ」
と、静かに、それでいて、力強くいい放ちます。
「これが最後の命だ。渋沢、この先は日本のために尽くせ。」
篤太夫の目をまっすぐ見つめて
彼の心の内をするどく見抜いて放つ一言。
なんと重みのある言葉。
上司とはこうあるべき、との姿を草彅慶喜は見せてくれます。
その言葉は
「この世を変えたい。新しい日本を作りたい。日本のために尽くしたい」と、幼い頃から思い続けてきた篤太夫の心にずしんと響いていく。
こうして、篤太夫は背中を押され近代日本へと続く未来の扉を開くことになる。
慶喜が我が身可愛さで篤太夫を自分の元に留めたら
今の日本はなかったかもしれない。
と思うと、何を考えてるのか全然わからないと言われつづけてきた徳川慶喜という人物の、先を見る目、底知れぬ器の大きさ、懐の深さ、が、窺いしれるじゃないの。
これを受けて
篤太夫は、
「平岡さまからいただいた篤太夫の名を返し、元の名に戻したい」
慶喜「元の名とはなんだ」
渋沢「渋沢栄一と申します」
放送初回冒頭のシーンがここで甦ってくるんだよね。
馬で走り去っていく徳川慶喜公の後を
「それがしは渋沢栄一でございます」と叫びながら追いかけていく栄一。
なんて素晴らしい構成。見事すぎる。震えるよ。
「そんな名であったかな。」
(そういえば、あれは円四郎の計らいであった。
円四郎が自分と篤太夫を繋いでくれたんだったな。その円四郎はもうこの世にはいない...そして、この篤太夫も..)
フフっと思いだし笑いをする慶喜の、懐かしそうな寂しそうな微笑み。
「今までありがとうございました。」
「渋沢栄一、大義であった。息災を祈る」
慶喜の後ろ姿。
大きな背中が小さく見えるよ...
そして、微笑むの。
その表情は、安堵したような、寂しげな、いろんな思いが入り交じりながらも、ほんとに柔らかで、優しい。
輝きが過ぎた慶喜が見せる儚さ加減が絶妙すぎて
余韻がいつまでも残る。
静な存在感に圧倒され
ゆったりと流れる空気と厳かな時間に鳥肌が立つ。
いやはや、何度も言うが
すごい役者だよ。
今まで抱いていた徳川慶喜のイメージをこんなにも変えてくれるんだから
それこそ、歴史に草彅慶喜の名を残したいくらい。
少なくとも我が人生に
草彅慶喜の存在はしっかりと刻み込みましたよ。