彼に台詞はいらない。
その目で全てを物語る。
喜びも悲しみも怒りも哀れみもあらゆる感情がこの目のなかに宿ってる。
瞳で全てを語る男
恐るべし、草彅剛。
だけど
能面を外して
見せたこの目に、私の心は一瞬にして凍りついた。
なんなの、この虚無感。
慶喜の視線はこちらにまっすぐに向けられてるのに感情が何も伝わってこない
目で語る男の目から
何も生まれてこない。
能面の下にあるこの無機質な目。
あまりに無表情で恐怖すら覚える。
慶喜の闇が瞬く間に広がって
私はそれに呑まれてあがらえない底無し沼に落ちていく。
ああ、そうか。
この面は、彼の心そのものなのか。
能面をはずしてもなお面をかぶり続けなきゃ自分が保てないのか。
能面に本来の自分を押し込めて徳川を継ぐ者としての慶喜を演じてるのか。
だから
この目なんだね。
だから
何も語ってくれないのね。
草彅剛の目。
物言わぬ狂気
その目をむやみに覗いてはなりません。
押し寄せてくる好奇心に負けて
禁断の扉を開いたなら
あなたはもうその瞳から逃れられない。
とてつもない覚悟が必要です。